「実力はあるのに、なぜ試合に出られない?」──監督・コーチに嫌われている息子を、親はどう守るべきなのか。直談判する前に考えてほしいこと
はじめに
「うちの子、そんなに下手じゃないと思うんです。」
そう思ったことはありませんか?
練習を見ていても、決して周りに劣っているわけではない。
むしろ、技術では負けていない。
走れる。
戦える。
練習だって休まず行っている。
本人も誰よりもサッカーが好きで、一生懸命努力している。
それなのに――
なぜか試合に出してもらえない。
ベンチに座っている時間ばかりが長くなる。
同じくらいの実力に見える選手が試合に出ているのに、自分の息子は出してもらえない。
そして、何度も何度もそんな光景を見ていると、親の中に、ある疑念が生まれてきます。
「もしかして、監督はうちの子が嫌いなのでは?」
「何か気に入らないことをしたのでは?」
「実力ではなく、好き嫌いで選手を選んでいるのでは?」
最初は、考えすぎだと思おうとします。
「監督にも考えがあるんだろう」
「まだ成長途中だから仕方ない」
「次は出してもらえるかもしれない」
そうやって、親も我慢します。
でも、それが何か月も続いたらどうでしょう。
息子は練習に行っている。
努力もしている。
それでも試合には出られない。
そして、帰宅した息子がぽつりと言う。
「今日も出られなかった。」
その一言を聞いた瞬間。
親の胸は、本当に苦しくなるんです。
「なんで?」
「どうしてあの子は出て、うちの子は出られないの?」
そんな感情が湧いてくる。
そして、
「一度、監督に話をしてみようか。」
そう考えるようになるのです。
でも――
ここで、少しだけ立ち止まってほしいと思います。
第1章 「親が監督に話せば、息子は救われる」──本当にそうでしょうか?
親なら、息子を助けたいと思うのが当然です。
自分の子どもが理不尽な扱いを受けているように感じたら、何とかしてあげたい。
これは当然の感情です。
「どうして使ってもらえないんですか?」
「息子には何が足りないんですか?」
「改善するためには何をすればいいんですか?」
監督やコーチに聞きたくなる。
場合によっては、
「明らかに息子より実力のない選手が試合に出ていますよね?」
と言いたくなるかもしれません。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。
監督・コーチも人間です。
これを忘れてはいけません。
指導者だから、常に冷静。
指導者だから、感情を持たない。
指導者だから、すべて公平。
そんなことはありません。
監督にも好き嫌いがあります。
相性があります。
指導者としての価値観があります。
選手を見る基準も違います。
「技術」を重視する監督もいれば、
「走力」を重視する監督もいる。
「戦術理解」を重視する監督もいる。
「声を出す選手」を評価する監督もいる。
「練習態度」を最も大切にする監督もいる。
そして残念ながら、
選手との相性や感情が、多少なりとも評価に影響してしまう指導者が存在することも否定できません。
だからこそ、親が正論をぶつければ、必ず状況が改善するとは限らないのです。
むしろ、
「親から試合に出せと言われた」
「自分の采配を否定された」
「うちの指導方針を理解していない」
そう受け取られてしまったらどうでしょう。
最悪の場合、
息子本人に影響が及んでしまう可能性があります。
もちろん、それはあってはいけないことです。
親と子どもは別です。
親が意見を言ったことで、子どもへの評価が変わるなんて、本来あってはいけません。
でも――
現実のスポーツ現場は、いつも理想通りではありません。
だからこそ、親は「正しいことを言う」だけではなく、
「その行動が息子にどんな影響を与えるのか」
まで考えなければいけないのです。
第2章 親が一番やってはいけないこと。それは「息子のため」と言いながら、親自身の悔しさをぶつけること
ここは、とても難しいところです。
息子が試合に出られない。
悔しい。
腹が立つ。
納得できない。
その気持ちはよく分かります。
でも、
それは本当に息子の気持ちでしょうか?
それとも、
親自身の気持ちでしょうか?
ここを一度、冷静に考えてみてください。
息子本人は、
「今は自分に足りないものがある」
と思っているかもしれない。
「次は出たい」
と思っているかもしれない。
「もっと練習しないと」
と考えているかもしれない。
なのに親が、
「なんで出してくれないの!」
「絶対おかしい!」
と監督に詰め寄ってしまったら。
息子はどうなるでしょう。
もちろん、救われる子もいるでしょう。
しかし、
「俺のせいで親が監督と揉めている」
と感じてしまう子もいます。
だから、まずは息子本人の気持ちを聞いてほしい。
「試合に出たい?」
「今のチームで頑張りたい?」
「監督のことをどう思っている?」
「何か困っていることはない?」
「自分では何が足りないと思う?」
親が先に答えを決めてはいけません。
息子の人生なのです。
親が戦う前に、息子が何を感じているのかを知ること。
それが最初です。
第3章 それでも「明らかに環境が合っていない」と感じたら
では、親は何もしないほうがいいのでしょうか?
私は、そうは思いません。
むしろ逆です。
親は、息子のサッカー環境を冷静に見続けるべきです。
試合に出られないことだけで判断する必要はありません。
練習ではどうなのか。
コーチは息子にどんな声をかけているのか。
失敗したとき、どんな対応をされているのか。
質問したときに、きちんと答えてもらえるのか。
努力を評価してくれているのか。
成長するための課題を教えてくれているのか。
そして何より、
息子がサッカーを楽しめているのか。
ここが大切です。
試合に出られない。
それだけなら、サッカーでは普通に起こります。
強いチームなら、なおさらです。
実力があっても、ポジションが重なれば出られないことがあります。
戦術上の理由もあります。
チーム事情もあります。
年齢や学年によって出場機会が変わることもあります。
だから、
「試合に出られない=悪いチーム」
ではありません。
しかし、
試合に出られないうえに、成長するための道筋すら見えない。
努力しても評価されない。
質問しても具体的な答えがない。
指導者との信頼関係が築けない。
息子自身がサッカーを嫌いになり始めている。
そこまで来たのであれば、
「このチームに居続けることが、本当に息子のためなのか?」
を考える必要があります。
第4章 「チームを変える=逃げる」ではない
私は、ここをもっと多くの親に知ってほしいと思っています。
チームを変えることは、逃げではありません。
もちろん、何でもかんでも簡単に移籍すればいいという話ではありません。
少し試合に出られないから。
一度ベンチになったから。
監督に怒られたから。
それだけでチームを変える必要はないでしょう。
サッカーには競争があります。
悔しい経験も必要です。
ベンチに座る経験から学ぶこともあります。
だからこそ、親は感情ではなく、長い目で息子を見る必要があります。
中学生なら、高校があります。
高校生なら、その先があります。
まだまだサッカー人生は長い。
一つのチーム。
一人の監督。
一つの大会。
それだけで息子のサッカー人生が決まるわけではありません。
なのに、
「ここで試合に出られないから終わり」
と考えてしまう。
これは、あまりにももったいない。
もしかすると別のチームへ行けば、もっと伸びるかもしれません。
もっとボールに触れるかもしれない。
もっと自信を持てるかもしれない。
もっとサッカーを好きになれるかもしれない。
そして、
本来持っていた才能が、ようやく表に出てくるかもしれない。
だから、チーム選びは本当に大切なのです。
第5章 「入団前に、もっと調べればよかった」──親として反省することも必要
少し厳しいことを言います。
今いるチームが合わなかった。
監督と息子の相性が悪かった。
思っていた指導方針と違った。
そうなったとき、
「監督が悪い」
「コーチが悪い」
と考えるだけではなく、
「親として、入団前の調査が足りなかったのではないか」
と振り返ることも大切だと思います。
どんな指導方針なのか。
どんな選手が試合に出るのか。
練習時間はどれくらいなのか。
競争はどの程度激しいのか。
監督はどんな人なのか。
卒団生はどんな進路に進んでいるのか。
上手い選手だけを集めるチームなのか。
育成を重視するチームなのか。
試合に出ることを重視するのか。
競争の中で成長させることを重視するのか。
入団する前に、できるだけ調べる。
それでも入ってみなければ分からないことはあります。
だから、もし合わなかったとしても、
「自分の判断が間違っていた」
と必要以上に自分を責める必要はありません。
大切なのは、
間違いに気づいたあと、どうするかです。
第6章 息子に合うチームは、必ずしも「一番強いチーム」ではない
親はどうしても、
「強いチームに入れたい」
と思ってしまいます。
強豪チーム。
有名クラブ。
実績のある指導者。
強い選手が集まる環境。
もちろん、素晴らしい環境です。
そこで競争できることには大きな意味があります。
しかし、
「強いチーム=息子にとって最高のチーム」
とは限りません。
試合に出られない。
練習でも自信を失う。
指導者との関係も良くない。
何をすれば評価されるのか分からない。
そして、サッカーそのものが嫌いになっていく。
それなら、
少しレベルを落としてでも、
試合に出られる。
ボールに触れられる。
失敗できる。
チャレンジできる。
指導者が選手一人ひとりを見てくれる。
そんな環境のほうが、息子にとって成長につながる場合があります。
これは決して、
「楽なチームへ逃げろ」
という話ではありません。
「自分が成長できる場所を選ぼう」
という話です。
最終章 息子のサッカー人生は、今いるチームだけでは決まらない
親として、一番苦しいのは、
自分の息子が頑張っているのに、その努力が報われないように見えることです。
練習に行く。
汗を流す。
疲れて帰ってくる。
それでも試合ではベンチ。
そんな姿を見ていたら、
「俺が何とかしてやらなければ」
と思ってしまいます。
監督に言いたくなる。
コーチに聞きたくなる。
「なぜうちの子を使わないんですか?」
と。
でも、その前に考えてほしい。
親が戦うことが、本当に息子を幸せにするのか。
直談判によって状況が変わる可能性もあります。
もちろん、話し合うことで指導者の考えが分かり、問題が解決することもあるでしょう。
だから、絶対に話してはいけないとは言いません。
ただし、
「話すことによって息子がさらに苦しい立場になる可能性」
も考えてほしいのです。
もし話をするなら、
「なぜ試合に出してくれないんですか?」
ではなく、
「息子が成長するために、今何が足りないでしょうか?」
と聞く。
「もっと使ってください」
ではなく、
「本人が努力すべきところを教えてください」
と聞く。
それでも何も変わらない。
どうしても指導者との信頼関係が築けない。
息子自身も苦しんでいる。
そうなったときには、
「チームを変える」という選択肢を持っていていい。
そして、それは負けではありません。
逃げでもありません。
息子の未来から逃げないための決断です。
サッカー人生は長い。
今、ベンチにいるからといって、将来もベンチとは限らない。
今、評価されていないからといって、ずっと評価されないわけでもない。
環境が変われば、人が変われば、指導者が変われば、息子自身が大きく変わることだってあります。
だから親が見るべきなのは、
「今、試合に出ているか」だけではありません。
「この場所で、息子は成長しているか。」
「サッカーを好きでいられているか。」
「自分から努力したいと思えているか。」
「未来につながる経験ができているか。」
ここを見てあげてください。
そして、もし今の環境が息子に合っていないと分かったのなら、
勇気を持って環境を変えることも考えていい。
息子のサッカー人生は、まだ始まったばかりです。
一つのチームにしがみつく必要なんてありません。
一人の監督に人生を決めてもらう必要もありません。
息子には、息子に合った場所があります。
親の役割は、その場所を一緒に探してあげることなのかもしれません。
「ここで頑張りなさい」
と言い続けることだけが、親の愛情ではありません。
時には、
「ここじゃない場所を探してみようか」
と言ってあげることも、息子を守る大切な愛情です。
そしていつか、
「あのときチームを変えてよかった」
「親が自分のことを信じてくれてよかった」
そう思ってもらえる日が来るかもしれません。
だからこそ、焦らないでください。
目の前の試合だけを見ないでください。
息子のサッカー人生は、まだまだこれからです。
一番大切なのは、どこで試合に出るかではない。
どこで、誰と、どんな指導を受けながら成長できるかです。
その場所を探すこと。
それこそが、息子の未来を本気で考える親にできる、最高のサポートなのだと思います。
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