#19|高齢者はなぜ熱中症になりやすい?──加齢による変化を知る
熱中症シリーズ
〜命を守る完全ガイド〜
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熱中症から命を守る
知らなかったでは済まされない、
予防・後遺症・暑さに備えるカラダづくり
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第3章|熱中症になりやすい人・環境を知る
#19|高齢者はなぜ熱中症になりやすい?──加齢による変化を知る
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「暑ければ、自分でわかるだろう。」
「のどが渇いたら、水を飲めばいい。」
「家の中にいるから、大丈夫。」
高齢の家族に対して、
そんなふうに思っていませんか?
しかし、高齢になると、
暑さに氣づく力。
のどの渇きに氣づく力。
そして、
カラダにたまった熱を外へ逃がす力。
そのすべてが、若い頃と同じとは限りません。
だからこそ、高齢者の熱中症では、
「本人が暑いと言っていない。」
「のどが渇いたと言っていない。」
ということだけでは、
安心できないのです。
実際に、総務省消防庁が公表している
2026年5月1日から8月9日までの速報値では、
全国で熱中症によって救急搬送された59,812人のうち、
65歳以上の高齢者は35,874人。
全体の60.0%を占めています。
もちろん、この数字は速報値であり、
今後修正される可能性があります。
それでも、
熱中症から命を守るうえで、
高齢者への対策がどれほど重要なのかがわかります。
では、
なぜ高齢者は熱中症になりやすいのでしょうか。
そこには、
年齢を重ねることで起こる、
いくつものカラダの変化が関係しています。
■|高齢者は「暑さ」を感じにくくなる
僕たちは暑くなると、
「暑い。」
「汗をかいてきた。」
「涼しいところへ行こう。」
と感じ、それをきっかけに行動します。
つまり、
暑さを感じること自体が、
カラダを守るための大切な警報でもあります。
しかし、高齢になると、
暑さに対する感覚が鈍くなることがあります。
環境省も、
高齢者では加齢によって
暑さに対する感覚機能が低下すると注意を呼びかけています。
そのため、
室温が上がっていても、
本人はそれほど暑いと感じていないことがあります。
ここに、
高齢者の熱中症対策の難しさがあります。
「暑いと感じてから対策する」のでは、遅くなる場合があるのです。
だから、
「おばあちゃんが暑くないと言っているから、エアコンはいらない。」
ではなく、
室温や暑さ指数など、
本人の感覚以外の情報も使いながら、
環境を確認する必要があります。
■|のどが渇いていなくても、水分が不足していることがある
もう一つ大きな問題が、
「のどの渇き」です。
通常は、
カラダの水分が不足してくると、
のどが渇き、
水を飲みたくなります。
ところが高齢者では、
脱水が進んでも、のどの渇きを感じにくくなることがあります。
そのため、
本人が、
「のどは渇いていない。」
「水はいらない。」
と言っていても、
それだけで水分が足りているとは判断できません。
ここでも大切なのは、
本人の感覚だけに頼らないことです。
「のどが渇いたら飲む。」
だけではなく、
のどが渇いていなくても、
日頃からこまめに水分をとる。
暑い日には、
家族や周囲の人も、
「水分とった?」
と声をかける。
こうした小さな行動が、
熱中症を防ぐことにつながります。
※心臓や腎臓などの病氣で水分量について医師から指示を受けている場合は、その指示に従ってください。
■|カラダに熱がたまりやすくなる
高齢者では、
暑さを感じにくくなるだけではありません。
暑い環境に置かれたときに、
皮膚の血流を増やしたり、
汗をかいたりして、
カラダの熱を外へ逃がす体温調節の働きも、
若い人と比べて低下する傾向があります。
つまり、
同じ部屋。
同じ氣温。
同じ時間。
そこで過ごしていたとしても、
若い人と高齢者では、
暑さに対するカラダの反応が同じとは限りません。
若い人が、
「このくらいなら平氣。」
と感じる環境でも、
高齢者のカラダには、
少しずつ熱がたまっている可能性があります。
「自分が大丈夫だから、この人も大丈夫。」
ではないのです。
■|高齢になると、カラダの水分割合も低下する
僕たちのカラダの多くは、水分でできています。
しかし、加齢に伴って、
体内に占める水分の割合は低下していきます。
そのため高齢者は、
若い人と比べて、
水分が失われたときの影響を受けやすくなります。
暑い日に汗をかく。
水分を十分にとれていない。
食事量も減っている。
そんな状態が重なると、
知らないうちに脱水が進んでいくことがあります。
しかも先ほどお伝えしたように、
高齢者では、
のどの渇きそのものを感じにくい場合があります。
つまり、
水分が不足しやすいのに、その不足にも氣づきにくい。
この組み合わせが、
高齢者の熱中症リスクを高める一つの理由です。
■|「家にいるから大丈夫」ではない
高齢者の熱中症を考えるうえで、
もう一つ知っておきたいことがあります。
それは、
熱中症は家の中でも起こるということです。
外を歩いている。
畑仕事をしている。
スポーツをしている。
炎天下で作業している。
そんなときだけが危険なのではありません。
エアコンを使わず、
氣温や湿度の高い部屋で長時間過ごしていれば、
ほとんど動いていなくても、
カラダには熱がたまっていきます。
特に高齢者では、
暑さを感じにくいため、
本人が危険な環境にいることに氣づかないまま、
長時間過ごしてしまうことがあります。
「昔はエアコンなんて使わなかった。」
「これくらいの暑さなら平氣。」
「冷房はカラダに悪いから。」
そうしたこれまでの感覚だけで、
今の暑さを判断しないことも大切です。
室内熱中症については、
この第3章の#24で、
さらに詳しくお伝えします。
■|一人暮らしでは「氣づいてくれる人がいない」というリスクもある
高齢者の熱中症リスクは、
カラダの変化だけで決まるわけではありません。
生活環境も関係します。
たとえば、一人暮らしの場合、
室温が上がっていても、
水分をとれていなくても、
少し体調がおかしくなっていても、
それに氣づき、
声をかけてくれる人が近くにいないことがあります。
熱中症では、
自分自身で異変に氣づけることが重要です。
しかし、
暑さやのどの渇きを感じにくくなっている人に、
その判断をすべて任せることには限界があります。
だからこそ、
高齢者の熱中症予防は、
本人だけの問題にしてはいけません。
家族。
近所の人。
介護に関わる人。
地域の人。
周囲が少し氣にかけることで、
防げる危険があります。
■|「本人が大丈夫と言っている」を、大丈夫の基準にしない
ここまで見てきたことを整理すると、
高齢者では、
暑さを感じにくくなる。
のどの渇きを感じにくくなる。
体温調節機能が低下する。
体内の水分割合が低下する。
さらに、
生活環境によっては、
異変に氣づいてくれる人がいない。
こうした要因が重なることがあります。
だから、
高齢者を熱中症から守るときに、
とても大切な考え方があります。
それが、
「本人が大丈夫と言っている」を、大丈夫の基準にしないことです。
もちろん、
本人の意思を無視するという意味ではありません。
本人の感覚だけでは氣づきにくい危険があることを、
本人も周囲も知っておくということです。
■|今日からできること
高齢の家族がいる方は、
まず今日、
次のことを確認してみてください。
・部屋の温度や暑さを、感覚だけで判断していないか
・エアコンを適切に使えているか
・のどが渇く前から水分をとれているか
・食事がきちんととれているか
・いつもと違う元氣のなさや、だるさがないか
・一人暮らしなら、暑い日に声をかける仕組みがあるか
まずは、
「暑くない?」と聞くだけではなく、環境とカラダの状態を一緒に確認する。
そこから始めてください。
高齢者の熱中症は、
本人が「暑い」「のどが渇いた」と訴えてから氣をつけるのではなく、
訴える前から周囲も動くことが大切です。
■|まとめ
高齢者が熱中症になりやすいのは、
単に、
「年をとったから。」
ということではありません。
加齢によって、
暑さに氣づきにくくなる。
のどの渇きに氣づきにくくなる。
カラダから熱を逃がす力が低下する。
体内の水分割合も低下する。
そこへ、
高温多湿な室内環境や、
一人暮らしなどの生活条件が重なることで、
危険がさらに高まることがあります。
だからこそ、
本人だけに熱中症対策を任せない。
高齢者の熱中症は、周囲が先に危険に氣づくことで防げる可能性があります。
「まだ元氣そうだから。」
「本人が大丈夫と言っているから。」
で終わらせず、
暑い日ほど、
いつもより少しだけ氣にかける。
その小さな行動が、
大切な人の命を守ることにつながります。
|次回予告
次回は、
#20|子どもはなぜ熱中症になりやすい?──大人との違い
についてお伝えします。
子どももまた、
「小さな大人」ではありません。
体温調節の仕組みや、
地面から受ける熱の影響、
自分で異変を伝える力など、
大人とは違う理由で熱中症のリスクが高くなります。
子どもを守るために、大人が何を知っておかなければならないのか。
次回、詳しく見ていきます。
|参考・出典
・総務省消防庁
「令和8年5月1日~8月9日の熱中症による救急搬送状況(速報値)」
・環境省
「高齢者のための熱中症対策」
・環境省
「熱中症環境保健マニュアル」
・厚生労働省
「熱中症を防ぎましょう」
※本記事の内容は、執筆時点で公的機関が公表している情報をもとに作成しています。
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|シリーズ一覧
第1章|熱中症の正体を知る(全9記事・公開済)
「熱中症とは何か」から始まり、体温調節の仕組み、発症メカニズム、重症化する理由まで、熱中症の本質を体系的に学べる章です。
第1章|熱中症の正体を知る
🟠 #0|なぜ今、熱中症を学ばなければならないのか
熱中症を今学ぶ必要性と、本シリーズを通して身につけてほしい知識と行動について解説しています。
🟠 #1|熱中症とは何か──まず知っておきたい基本
熱中症の定義と、体温調節が破綻することで起こる病態の基本を解説しています。
🟠 #2|熱中症を防ぐ体温調節の仕組み──人はなぜ体温を保てるのか
人間が体温を一定の範囲に保つために働く、汗や皮膚血流などの体温調節機能を解説しています。
🟠 #3|熱中症はどう起こる?──カラダの中で起きていること
熱中症が発症するまでに、熱・血液・水分・脳や臓器にどのような変化が起きるのかを解説しています。
🟠 #4|熱中症は誰でもなる──「自分は大丈夫」が一番危ない
年齢や体力に関係なく、誰にでも熱中症が起こる可能性がある理由を解説しています。
🟠 #5|熱中症は予防できる──起きる前の判断が命を守る
熱中症を防ぐために必要な基本的な考え方と、早い段階で行動を変える重要性を解説しています。
🟠 #6|熱中症になると何が起こる?──全身に及ぶ影響
熱中症が進行したとき、脳・心臓・血管・腎臓・筋肉・肝臓・血液凝固など、全身へどのような影響が及ぶのかを解説しています。
🟠 #7|熱中症が命を奪う理由──死亡と後遺症を防ぐために
熱中症が重症化すると、なぜ死亡や後遺症につながることがあるのか。命を守るために知っておきたい危険性と、早期対応の重要性を解説しています。
🟠 #8|第1章まとめ──熱中症を正しく知ることが命を守る第一歩
熱中症の仕組みや危険性など、第1章で学んだ大切なポイントを整理した記事です。
第2章|熱中症の症状を知る
熱中症では、どのような症状が現れるのか。
初期症状から重症化のサイン、受診の判断まで、熱中症を見逃さず、命を守るために知っておきたい症状と対応を学ぶ章です。
🔵 #9|熱中症ではどんな症状が出る?──見逃してはいけないサイン
熱中症では、軽い異変から命に関わる症状まで、さまざまなサインが現れます。症状全体を俯瞰し、第2章で何を学ぶのかをわかりやすく解説しています。
🔵 #10|これって熱中症?──最初に現れやすい初期症状
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、こむら返り、頭痛、吐き氣、倦怠感など、熱中症の初期に現れやすい症状と、「まだ大丈夫」と見過ごさず早めに氣づくことの重要性を解説しています。
🔵 #11|熱中症の危険なサインを見逃さない──重症化を疑う症状
意識がおかしい、呼びかけへの反応が鈍い、まっすぐ歩けない、けいれん、高体温など、熱中症の重症化を疑う危険なサインと、迷わず救急要請につなげることの重要性を解説しています。
🔵 #12|熱中症では汗はどう変わる?──汗が出ない・汗が止まらないとき
大量の汗や、暑いのに汗が出にくい状態など、熱中症で見られる汗の変化と、汗だけでは重症度を判断できない理由を解説しています。
🔵 #13|熱中症?それとも別の病氣?──見分けるときの考え方
熱中症と似た症状を示す病氣もあります。熱中症を疑うことは大切ですが、思い込みによって重大な病氣を見逃さないための考え方を解説します。
🔵 #14|この症状、大丈夫?──熱中症の重症度を見極める考え方
熱中症のⅠ度からⅣ度までの重症度分類と、症状や全身状態の変化を見ながら、必要な対応を考えるための重症度の考え方を解説しています。
🔵 #15|病院へ行く?救急車を呼ぶ?──熱中症での受診判断基準
熱中症が疑われたとき、病院を受診するタイミングや救急車を呼ぶ判断基準について解説しています。意識や反応、水分摂取の可否、症状の改善など、命を守るために知っておきたい受診判断のポイントを学べます。
🔵 #16|少し良くなっても油断しない──熱中症はその後の見守りも大切
熱中症では、症状が軽くなっても安心とは限りません。改善後も見守るべきポイントや、無理に活動を再開しないことの大切さについて解説しています。
🔵 #17|第2章まとめ──熱中症の症状を知ることが命を守る
熱中症の初期症状や危険なサイン、重症度、受診判断、改善後の見守りなど、第2章で学んだ大切なポイントを整理し、異変に早く氣づき、必要な行動につなげるための考え方をまとめています。
第3章|熱中症になりやすい人・環境を知る
熱中症は誰にでも起こる可能性がありますが、その危険性は年齢、体調、持病、生活環境、活動内容などによって変わります。
第3章では、「危険な人」を決めつけるのではなく、どんな危険な条件が重なっているのかを見て、熱中症になる前に危険を予測する力を身につけていきます。
🟢 #18|熱中症はどんな人がなりやすい?──リスクを知ることが予防の第一歩
熱中症のなりやすさは、年齢や体調、生活環境、活動内容などによって変わります。「危険な人」ではなく「危険な条件が重なっていないか」という、第3章全体の土台となる考え方を解説しています。
🟢 #19|高齢者はなぜ熱中症になりやすい?──加齢による変化を知る(今回の記事)
加齢によって、暑さやのどの渇きを感じにくくなり、体温調節機能なども変化します。高齢者が熱中症になりやすい理由と、本人の感覚だけに頼らず、周囲が見守ることの大切さを解説しています。
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