バタフライの壁と、娘の自立。育児というプロジェクトの「出口」
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「水泳でバタフライが出来ないみたいだよ」
妻からもたらされたその情報を受け、私は再びプールサイドに立った。 大きくなった娘は、以前よりもずっと見つけやすくなっていた。上手く泳げている、正直そう思った。だがバタフライの時間になると、動きがぎこちなくなり、すぐに立ってしまう。明確な違和感があった。
「ね、バタフライ苦労してるみたいだから、教えてあげてよ」と妻に言われ、私は「そうだね」と生返事をした。「どうしたの?」と聞かれたが、「少し考えるよ」とだけ答えた。
妻によれば、娘は最近あまり水泳に行きたがらないという。私の母からも「パパの出番でしょう」と発破をかけられた。「難しいものね、いつものように教えてあげなよ」と言う母に、私はこう返した。
「そう思って用意はしてある。でも、恐らく技術的な壁じゃないような気がする。彼女が『教えて』と言ってくれないから」
母は不思議そうな顔をしていたが、私はそれ以上言わなかった。妻にも母にも「私が責任を持つから、動かないでくれ」とだけ頼み、静観を貫いた。
私は分かっていた。娘がぶつかっているのは技術ではなく、心の壁だ。 技術の壁なら、私がどうにかできる。今までもそうやってきた。だが、心の壁だけはどうにもならない。だから、待った。彼女自身が、彼女自身の言葉で話してくれるのを。
そして、しばらくしたある日、その瞬間が訪れた。
「パパ、少し話があるんだけど」 「いいよ、何?」
「パパ、私、水泳を辞めてダンスが習いたい」
隣で聞いていた妻は驚いていたが、私は短く答えた。
「そうか、分かった。すぐには無理だけど、その方向で動くよ」
「ありがとう」 そう言って笑った娘を見て、
私は「本当に大きくなったんだな」と心の底から思った。
娘は私に「教えて」ではなく、「辞めて、次へ行きたい」と言ってくれた。 自分のことを自分で考え、決断し、自ら伝えてきた。 その決断ができるようになったことを頼もしく思う反面、胸の奥が少しだけ、ちりりと痛んだ。
産婦人科で生まれたばかりの彼女を初めて抱っこしたあの日。 思った以上に小さくて、そして思った以上に重たかったあの子。 あの日の「物理的な重さ」は、今、彼女自身の人生という名の「責任の重さ」へと変わったのだ。その重みを自分で背負おうとする彼女の背中は、もう十分に頼もしい。
彼女が「辞めて、ダンスを習いたい」と言ってくれた時の心境は、かつて私がマンションを買う報告をした時の、私の父の心境と同じだったのだろう。 凄くうれしくて、そして、ちょっぴり寂しい。
これまでの苦労は、決して無駄ではなかった。 私の「解析」を必要としなくなった娘の背中を見送りながら、私は静かに、育児という名のプロジェクトの「出口」に手をかけた。
避雷針パパのまとめ
育児とは、親が「不要」になる日を目指して進める、最も幸福で最も切ないマネジメントである。 時には介入して道を示し、時には沈黙して自立を待つ。
子供が「辞めたい」と言い出した時、動揺する必要はない。 親の仕事は、子供に「正解」を与えることではない。子供が自分で出した「答え」を、全力で肯定する準備をしておくことだ。
娘が自分の意志で「次」を選んだあの日、私は解析官としての最大の報酬を受け取った。 これからは、彼女が決めた道を、一番近くで支える最強のサポーターとして並走していこうと思う。
最後に:新たなプロジェクトの始動
全20回にわたり、わが家の「解析」にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。 娘が自立の一歩を踏み出した今、私の中でも一つの大きな区切りがつきました。
同時に、この記録を単なる日記で終わらせるのではなく、同じように悩む親御さんや、これから戦場に立つ方々へ届けるための「Kindle出版」の準備を現在進めています。
noteでは書ききれなかった未公開エピソードや、より詳細な戦略・解析データを体系的にまとめ、一冊の本としてリリースする予定です。進捗については引き続きこのnoteやX(旧Twitter)でお知らせしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。
【完結にあたってのご挨拶】
最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。 「育児全史」という一つのプロジェクトをこうして完結できたのは、読者の皆さんの存在があったからです。
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それでは、また次の「解析」でお会いしましょう。
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無力さを知ったあの日から、もっと強く守ると決めた。
頂いたチップは、娘の笑顔を最大化する「仕組み」への投資と、娘への贈り物のために大切に運用します。戦略家パパ、娘のために全力で走ります。