#22|持病や薬だけじゃない──熱中症リスクを高めるカラダの状態
熱中症シリーズ
〜命を守る完全ガイド〜
──────────────────────────────────
熱中症から命を守る
知らなかったでは済まされない、
予防・後遺症・暑さに備えるカラダづくり
──────────────────────────────────
第3章|熱中症になりやすい人・環境を知る
#22|持病や薬だけじゃない──熱中症リスクを高めるカラダの状態
──────────────────────────────────
「持病がある人は、熱中症に氣をつけた方がいい。」
そんな話を聞いたことがある人も多いと思います。
たしかに、
心臓や腎臓の病氣。
糖尿病。
高血圧。
精神疾患など、
持病によっては、熱中症のリスクが高くなることがあります。
また、
治療のために服用している薬の中にも、
暑い環境での体温調節や水分バランスなどに影響するものがあります。
しかし、
今回知ってほしいのは、
熱中症のリスクを高めるのは、持病や薬だけではない。
ということです。
自分で水分を取りに行けるか。
暑いと感じたときに、涼しい場所へ移動できるか。
エアコンをつけたり、衣服を調整したりできるか。
自分の体調の変化に氣づき、それを周囲へ伝えられるか。
こうした、
「自分で暑さから身を守ることができるかどうか」も、熱中症のリスクを左右します。
だからこそ、
本人だけに「氣をつけてね」と任せるのではなく、
家族や周囲の人が、その人の状態に合わせて見守ることが大切です。
■|持病があると、なぜ熱中症のリスクが高まるのか
暑い環境では、
僕たちのカラダは、
皮膚の血流を増やしたり、
汗をかいたりすることで、
体内の熱を外へ逃がそうとします。
そのためには、
心臓や血管、
腎臓などが働き、
カラダの水分や血液循環が保たれていることが重要です。
ところが、
持病によっては、
こうした暑さへの対応に負担がかかりやすくなることがあります。
たとえば、
心臓の働きに問題があれば、
暑さによって増える循環への負担に対応しにくくなる場合があります。
腎臓の機能に問題があれば、
カラダの水分や電解質の調整が難しくなる場合があります。
糖尿病などの持病がある場合にも、
脱水や体温調節などへの影響によって、
暑さに対するリスクが高くなることがあります。
つまり、
同じ暑さの中にいても、
カラダが暑さに対応できる余力は、すべての人が同じではありません。
「いつも通り生活できているから大丈夫。」
とは限らないのです。
■|薬によって熱中症リスクが高まることもある
もう一つ知っておきたいのが、
服用している薬の影響です。
薬の中には、
治療に必要な働きをする一方で、
暑い環境では、
体温調節や水分バランスに影響するものがあります。
たとえば、
尿を増やす作用のある薬では、
体内から水分が失われやすくなる場合があります。
心臓や血圧に作用する薬の中には、
暑いときの循環調節に影響するものがあります。
また、
精神疾患などに使われる薬の中にも、
発汗や体温調節などに影響し、
暑い環境で注意が必要になるものがあります。
ただし、
ここで絶対に間違えてはいけないことがあります。
「この薬を飲んでいるから危険だ」と、自分で薬をやめてはいけません。
薬は、その人の病氣を治療し、状態を安定させるために必要なものです。
自己判断による中断は、
持病そのものを悪化させる危険があります。
「自分が飲んでいる薬は、暑い時期に注意が必要なのか。」
「水分の取り方に注意した方がいいのか。」
心配な場合は、
医師や薬剤師に確認してください。
薬をやめるのではなく、
薬を飲みながらどう安全に暑さを乗り切るかを考えることが大切です。
■|自分で水分を取れないことも、大きなリスクになる
熱中症予防では、
「こまめに水分を取りましょう。」
とよく言われます。
しかし、
すべての人が、
必要なときに自分で水分を取れるわけではありません。
たとえば、
カラダを自由に動かしにくい。
一人で冷蔵庫まで行くことが難しい。
飲み物のふたを開けることができない。
水分を用意してもらわなければ飲めない。
こうした状態にある人では、
「のどが渇いたら飲む。」
という対策そのものが難しくなります。
つまり、
飲み物が家の中にあるだけでは、
熱中症予防にならない場合があるのです。
その人が実際に、自分で水分を取れる状態なのか。
ここまで考える必要があります。
■|「暑い」と氣づけても、暑さから逃げられないことがある
同じことは、
暑さを避ける行動にも言えます。
熱中症を防ぐためには、
暑ければ、
エアコンをつける。
窓やカーテンを調整する。
衣服を調整する。
涼しい場所へ移動する。
といった行動が必要になります。
しかし、
身体機能が低下している人の場合、
暑いと感じていても、
自分だけではその行動を取れないことがあります。
ベッドや椅子から自由に移動できない。
エアコンを操作できない。
衣服を脱いだり着替えたりすることが難しい。
こうした状態では、
「暑ければ本人が何とかするだろう」という考え方そのものが危険になることがあります。
暑さに氣づくことと、
暑さから自分を守れることは、
同じではありません。
■|認知機能が低下している人では、「危険に氣づく」こと自体が難しい場合がある
さらに注意したいのが、
認知機能が低下している人です。
室温が高くなっていても、
暑さへの危険性を十分に理解できない。
水分を取ったことを忘れてしまう。
反対に、
長い時間、水分を取っていないことに氣づかない。
エアコンを消してしまう。
体調が悪くても、それをうまく伝えられない。
こうしたことが起こる場合があります。
本人に悪氣があるわけでも、
熱中症対策を軽く考えているわけでもありません。
必要な行動を自分だけで判断し、続けることが難しくなっている可能性があるのです。
だからこそ、
「何度も言っているから大丈夫。」
ではなく、
実際に室温はどうなっているのか。
水分は取れているのか。
いつもと様子が違わないか。
周囲が確認することが必要になります。
■|大切なのは「その人に何ができるか」まで見ること
熱中症になりやすい人を考えるとき、
僕たちはつい、
「何歳か。」
「どんな病氣があるか。」
「どんな薬を飲んでいるか。」
という条件だけを見てしまいます。
もちろん、
それらは大切な情報です。
でも、
もう一歩先まで見てください。
暑さに自分で氣づけるか。
のどの渇きや体調の変化を感じ取れるか。
自分で水分を取れるか。
自分で涼しい場所へ移動できるか。
エアコンなどを自分で使えるか。
体調が悪いとき、誰かに伝えられるか。
ここまで見て初めて、
その人が暑さの中でどれくらい自分自身を守れるのかが見えてきます。
熱中症リスクは、
病名だけでは判断できません。
「その人が暑さから自分を守るための行動を取れる状態なのか。」
という視点も必要なのです。
■|本人だけに任せない──周囲にできることがある
もし、
家族や身近な人に、
持病がある。
複数の薬を服用している。
カラダを自由に動かしにくい。
認知機能が低下している。
一人で暑さ対策をすることが難しい。
そんな人がいるなら、
暑い日は、
本人任せにしないことが大切です。
室温を確認する。
エアコンが使われているかを見る。
飲み物を手の届く場所に置く。
実際に水分が取れているか確認する。
食事が取れているかを見る。
いつもと違う様子がないか声をかける。
必要であれば、
医師や薬剤師に、
暑い時期の過ごし方や水分補給について相談する。
特別に難しいことばかりではありません。
けれど、
こうした小さな確認が、
熱中症を防ぐことにつながります。
「氣をつけてね」と伝えるだけでは守れない人がいます。
その人が自分でできない部分を、
周囲が少し補う。
それも、
大切な熱中症対策です。
■|まとめ──熱中症リスクは「病氣があるか」だけでは決まらない
持病がある。
薬を飲んでいる。
身体機能が低下している。
認知機能が低下している。
自分で水分を取ったり、
暑さを避けたりすることが難しい。
こうした状態は、
それぞれ違う理由で、
熱中症のリスクを高める可能性があります。
だから、
熱中症になりやすい人を見るときに大切なのは、
病名や薬の名前だけではありません。
その人が、自分で暑さに氣づき、自分で命を守る行動を取れる状態なのか。
そこまで見ることです。
そして、
一人では難しいことがあるなら、
家族や周囲が補う。
「氣をつけてね」と伝えるだけでは守れない人がいます。
周囲がその人のできないことに氣づき、
必要な部分を少し補う。
それも、
熱中症から命を守るための大切な予防です。
|次回予告
次回は、
人のカラダから、
周囲の「環境」へ視点を移します。
同じ氣温でも、
湿度が違えば、
カラダから熱を逃がす力は大きく変わります。
#23|氣温だけじゃない──湿度が熱中症リスクを高める理由
「今日はそれほど氣温が高くないから大丈夫。」
その判断が危険になる理由を見ていきます。
|参考・出典
環境省|熱中症環境保健マニュアル ~総論~(2025年7月版)
熱中症の基本的な仕組み、熱中症予防の基本的な考え方、暑さを避けることや水分補給など、本記事全体の基礎となる内容の確認に使用しました。
環境省|熱中症環境保健マニュアル 各論7(その他の熱中症になりやすい人の注意事項)(案)
持病のある人やカラダに障がいのある人など、熱中症になりやすい人の特徴や注意事項について参考にしました。
環境省|熱中症環境保健マニュアル2022
持病、身体機能、生活環境などによって熱中症の危険性が高まることや、暑さを避けること、水分補給、周囲による見守りなどの考え方について参考にしました。
日本救急医学会|熱中症診療ガイドライン2024
心疾患、糖尿病などの基礎疾患や、利尿薬、降圧薬、向精神薬など一部の薬剤と熱中症リスクとの関係、および熱中症の病態について医学的な確認に使用しました。
※本記事の内容は、執筆時点で公的機関が公表している情報をもとに作成しています。
※熱中症の予防や対応については、年齢・持病・服薬状況・身体機能などによって適切な方法が異なる場合があります。持病の治療や服用中の薬については自己判断で変更・中止せず、必要に応じて医師・薬剤師などの専門家へご相談ください。
|関連記事
#18|熱中症はどんな人がなりやすい?──リスクを知ることが予防の第一歩
熱中症のなりやすさは、年齢や体調、生活環境、活動内容などによって変わります。「危険な人」ではなく「危険な条件が重なっていないか」という、第3章全体の考え方を解説しています。
#19|高齢者はなぜ熱中症になりやすい?──加齢による変化を知る
暑さやのどの渇きへの氣づき、体温調節機能など、高齢になることで変化する熱中症リスクについて解説しています。
#20|こんなに氣をつけているのに、なぜ子どもが熱中症になるのか?
子ども特有のカラダや行動の特徴と、本人任せではなく周囲の大人が守る必要がある理由を解説しています。
#21|若くて元氣でも、なぜ熱中症になる?──仕事・スポーツに潜む危険
若く健康で体力があっても、仕事やスポーツによる熱産生や無理の積み重ねで熱中症になる理由を解説しています。
「Online Program 呼吸と姿勢」のご案内
|熱中症対策は、暑い日の水分補給だけではありません
熱中症への備えには、
その日の暑さ対策だけでなく、
睡眠。
食事。
運動。
休養。
呼吸。
姿勢。
そして、日頃から自分のカラダの変化に氣づくことも大切です。
「Online Program 呼吸と姿勢」では、
呼吸と姿勢を軸に、毎日の生活の中でカラダを整える習慣づくりを続けています。
暑くなってから慌てるのではなく、
日頃から暑さに備えられるカラダづくりを。
|シリーズ一覧
第1章|熱中症の正体を知る(全9記事・公開済)
「熱中症とは何か」から始まり、体温調節の仕組み、発症メカニズム、重症化する理由まで、熱中症の本質を体系的に学べる章です。
第1章|熱中症の正体を知る
🟠 #0|なぜ今、熱中症を学ばなければならないのか
熱中症を今学ぶ必要性と、本シリーズを通して身につけてほしい知識と行動について解説しています。
🟠 #1|熱中症とは何か──まず知っておきたい基本
熱中症の定義と、体温調節が破綻することで起こる病態の基本を解説しています。
🟠 #2|熱中症を防ぐ体温調節の仕組み──人はなぜ体温を保てるのか
人間が体温を一定の範囲に保つために働く、汗や皮膚血流などの体温調節機能を解説しています。
🟠 #3|熱中症はどう起こる?──カラダの中で起きていること
熱中症が発症するまでに、熱・血液・水分・脳や臓器にどのような変化が起きるのかを解説しています。
🟠 #4|熱中症は誰でもなる──「自分は大丈夫」が一番危ない
年齢や体力に関係なく、誰にでも熱中症が起こる可能性がある理由を解説しています。
🟠 #5|熱中症は予防できる──起きる前の判断が命を守る
熱中症を防ぐために必要な基本的な考え方と、早い段階で行動を変える重要性を解説しています。
🟠 #6|熱中症になると何が起こる?──全身に及ぶ影響
熱中症が進行したとき、脳・心臓・血管・腎臓・筋肉・肝臓・血液凝固など、全身へどのような影響が及ぶのかを解説しています。
🟠 #7|熱中症が命を奪う理由──死亡と後遺症を防ぐために
熱中症が重症化すると、なぜ死亡や後遺症につながることがあるのか。命を守るために知っておきたい危険性と、早期対応の重要性を解説しています。
🟠 #8|第1章まとめ──熱中症を正しく知ることが命を守る第一歩
熱中症の仕組みや危険性など、第1章で学んだ大切なポイントを整理した記事です。
第2章|熱中症の症状を知る
熱中症では、どのような症状が現れるのか。
初期症状から重症化のサイン、受診の判断まで、熱中症を見逃さず、命を守るために知っておきたい症状と対応を学ぶ章です。
🔵 #9|熱中症ではどんな症状が出る?──見逃してはいけないサイン
熱中症では、軽い異変から命に関わる症状まで、さまざまなサインが現れます。症状全体を俯瞰し、第2章で何を学ぶのかをわかりやすく解説しています。
🔵 #10|これって熱中症?──最初に現れやすい初期症状
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、こむら返り、頭痛、吐き氣、倦怠感など、熱中症の初期に現れやすい症状と、「まだ大丈夫」と見過ごさず早めに氣づくことの重要性を解説しています。
🔵 #11|熱中症の危険なサインを見逃さない──重症化を疑う症状
意識がおかしい、呼びかけへの反応が鈍い、まっすぐ歩けない、けいれん、高体温など、熱中症の重症化を疑う危険なサインと、迷わず救急要請につなげることの重要性を解説しています。
🔵 #12|熱中症では汗はどう変わる?──汗が出ない・汗が止まらないとき
大量の汗や、暑いのに汗が出にくい状態など、熱中症で見られる汗の変化と、汗だけでは重症度を判断できない理由を解説しています。
🔵 #13|熱中症?それとも別の病氣?──見分けるときの考え方
熱中症と似た症状を示す病氣もあります。熱中症を疑うことは大切ですが、思い込みによって重大な病氣を見逃さないための考え方を解説します。
🔵 #14|この症状、大丈夫?──熱中症の重症度を見極める考え方
熱中症のⅠ度からⅣ度までの重症度分類と、症状や全身状態の変化を見ながら、必要な対応を考えるための重症度の考え方を解説しています。
🔵 #15|病院へ行く?救急車を呼ぶ?──熱中症での受診判断基準
熱中症が疑われたとき、病院を受診するタイミングや救急車を呼ぶ判断基準について解説しています。意識や反応、水分摂取の可否、症状の改善など、命を守るために知っておきたい受診判断のポイントを学べます。
🔵 #16|少し良くなっても油断しない──熱中症はその後の見守りも大切
熱中症では、症状が軽くなっても安心とは限りません。改善後も見守るべきポイントや、無理に活動を再開しないことの大切さについて解説しています。
🔵 #17|第2章まとめ──熱中症の症状を知ることが命を守る
熱中症の初期症状や危険なサイン、重症度、受診判断、改善後の見守りなど、第2章で学んだ大切なポイントを整理し、異変に早く氣づき、必要な行動につなげるための考え方をまとめています。
第3章|熱中症になりやすい人・環境を知る
熱中症は誰にでも起こる可能性がありますが、その危険性は年齢、体調、持病、生活環境、活動内容などによって変わります。
第3章では、「危険な人」を決めつけるのではなく、どんな危険な条件が重なっているのかを見て、熱中症になる前に危険を予測する力を身につけていきます。
🟢 #18|熱中症はどんな人がなりやすい?──リスクを知ることが予防の第一歩
熱中症のなりやすさは、年齢や体調、生活環境、活動内容などによって変わります。「危険な人」ではなく「危険な条件が重なっていないか」という、第3章全体の土台となる考え方を解説しています。
🟢 #19|高齢者はなぜ熱中症になりやすい?──加齢による変化を知る
加齢によって、暑さやのどの渇きを感じにくくなり、体温調節機能なども変化します。高齢者が熱中症になりやすい理由と、本人の感覚だけに頼らず、周囲が見守ることの大切さを解説しています。
🟢 #20|こんなに氣をつけているのに、なぜ子どもが熱中症になるのか?
帽子や水分補給などに氣をつけていても、子どもが熱中症になることがあります。子ども特有のカラダや行動の特徴と、周囲の大人がさらに一歩先回りして守るために知っておきたいことを解説しています。
🟢 #21|若くて元氣でも、なぜ熱中症になる?──仕事・スポーツに潜む危険
若くて健康で体力があっても、仕事やスポーツではカラダ自身が熱をつくり、無理を続けることで熱中症になることがあります。「まだ動ける=大丈夫」ではない理由と、限界になる前に止まる判断の大切さを解説しています。
🟢 #22|持病や薬だけじゃない──熱中症リスクを高めるカラダの状態(今回の記事)
持病や服用している薬だけでなく、身体機能や認知機能、自分で水分を取れるか、暑さを避けられるかといった状態も熱中症リスクに関係します。本人任せにせず、その人が自分で暑さから身を守れる状態なのかを見ることの大切さを解説しています。
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んで頂き、有難うございます。チップは必要ありません。これからもあなたがSHP(超健康体)になるための記事を全力で執筆しますので、実践”して超元氣になって下さい!良い記事には「スキ」や「シェア」をお願いします^^