#23|氣温がそれほど高くなくても危険?──湿度が熱中症リスクを高める理由
熱中症シリーズ
〜命を守る完全ガイド〜
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熱中症から命を守る
知らなかったでは済まされない、
予防・後遺症・暑さに備えるカラダづくり
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第3章|熱中症になりやすい人・環境を知る
#23|氣温がそれほど高くなくても危険?──湿度が熱中症リスクを高める理由──────────────────────────────────
「今日はそれほど氣温が高くないから、大丈夫。」
「30℃を超えていないから、まだ危険ではない。」
「真夏ほど暑くないから、熱中症にはならないだろう。」
そんなふうに、
氣温だけを見て、熱中症の危険を判断していませんか?
もちろん、
氣温が高くなるほど、カラダは熱を逃がしにくくなります。
しかし、
熱中症の危険を決めるのは、氣温だけではありません。
見落としてはいけないものの一つが、
「湿度」です。
同じ氣温でも、
湿度が高い日と低い日では、
カラダから熱を逃がしやすさが変わります。
だから、
「今日は何℃か。」
だけでは、
その日の危険を十分に判断できないのです。
■|汗は「出ること」だけでカラダを冷やしているわけではない
暑くなると、
僕たちのカラダは汗をかきます。
ここで、とても大切なことがあります。
汗は、皮膚から出ただけでは十分にカラダを冷やせません。
皮膚の表面に出た汗が、
空氣中へ蒸発することによって、
カラダの熱が奪われます。
これが、
汗による大切な放熱の仕組みです。
つまり、
汗をかく。
↓
汗が蒸発する。
↓
カラダの熱が外へ逃げる。
という流れがあって、
はじめて汗は体温調節に役立ちます。
環境省も、暑いときには汗や皮膚血流などによって熱を外へ逃がし、体温を調節していることを示しています。
■|湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなる
では、
湿度が高くなると何が起こるのでしょうか。
湿度が高い環境では、
皮膚についた汗が、
空氣中へ蒸発しにくくなります。
すると、
皮膚についた汗が空氣中へ蒸発しにくくなります。
汗をたくさんかいていても、
その汗が十分に蒸発しなければ、
カラダの熱をうまく外へ逃がすことができません。
その結果、
カラダの中に熱がたまりやすくなります。
環境省でも、
「湿度が高い」ことを熱中症を引き起こす環境要因の一つとして挙げています。
ここが、
湿度を考えるうえで、とても重要なポイントです。
汗をかいている=熱を逃がせている
とは限りません。
むしろ、
蒸し暑い日に汗びっしょりになっているのに、
なかなかカラダが冷えない。
そんな状態では、
汗をかき続けながら、
カラダの中には熱がたまっていくことがあります。
■|「汗をたくさんかいているから大丈夫」ではない
湿度の高い日に、
「汗が出ているから、体温調節できている。」
と思ってしまうことがあります。
しかし、
汗をかいていることと、熱を十分に逃がせていることは同じではありません。
湿度が高く、
さらに風が弱い環境では、
汗が蒸発しにくく、
カラダの中に熱がたまりやすくなります。
一方で、
汗をかき続ければ、
水分や電解質は失われていきます。
つまり、
熱を逃がしにくいのに、水分は失われていく。
これが、
蒸し暑い環境で注意したい状態です。
だからこそ、
「汗をかいているから大丈夫。」
と判断しないことが大切です。
■|梅雨の時期も油断できない
熱中症というと、
7月や8月の、
強烈な日差しと猛暑を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、
注意したいのが、
梅雨の時期や、蒸し暑くなり始めた頃です。
真夏ほど氣温が高くなくても、
湿度が高ければ、
汗による放熱がうまくいかないことがあります。
さらに、
暑くなり始めた時期は、
カラダがまだ暑さに十分慣れていない場合もあります。
「まだ真夏じゃない。」
「今日は30℃もない。」
そんな感覚だけで判断していると、
危険を見落としてしまうことがあります。
熱中症は、真夏だけの問題ではありません。
蒸し暑さを感じ始めた時点から、
すでに注意が必要なのです。
■|だから「氣温」だけでは危険を判断できない
天氣予報を見ると、
僕たちはつい、
「今日の最高氣温は何℃だろう。」
と、氣温を見ます。
もちろん、
氣温は非常に重要です。
しかし、
熱中症の危険を判断するときには、
それだけでは十分ではありません。
湿度。
日差し。
地面や建物から受ける輻射熱。
風。
そして氣温。
さまざまな条件によって、
カラダが受ける暑さは変わります。
だからこそ使われているのが、
暑さ指数「WBGT」です。
環境省によると、WBGTは、
・湿度
・日射や輻射など周辺の熱環境
・氣温
を取り入れ、
カラダと外氣との熱のやりとりを考えてつくられた指標です。
さらに環境省は、
熱中症による救急搬送者数との関連について、
氣温だけを見るより、
湿度や日射・輻射も考慮したWBGTの方が強いことが知られていると説明しています。
ただし、
WBGTの詳しい見方や、
熱中症警戒アラートをどう行動につなげるかについては、
第4章の#37で詳しく取り上げます。
ここで覚えておいてほしいのは、
一つだけです。
熱中症の危険は、「今日は何℃か」だけでは決められない。
ということです。
■|「蒸し暑い」と感じる日は、カラダの変化にも目を向ける
「今日はムシムシする。」
「汗がベタベタする。」
「汗をかいているのに、全然涼しくならない。」
そんな日は、
ただ不快なだけではありません。
カラダから熱を逃がしにくい環境になっている可能性があります。
特に、
汗をたくさんかいている。
いつもよりカラダが熱く感じる。
だるさが出てきた。
頭痛や吐き氣がある。
めまいや立ちくらみがある。
そんな変化が重なってきたら、
「氣温はそれほど高くないから。」
と動き続けるのではなく、
早めに涼しい場所へ移動し、
休むことが大切です。
数字だけではなく、自分のカラダの変化を見る。
これも、
熱中症から命を守るための大切な判断です。
■|今日から「氣温+湿度」で見る習慣を
今日からできることは、
難しくありません。
天氣予報を見るとき、
最高氣温だけで終わらせず、
湿度にも目を向けてください。
そして、
「今日は何℃だから大丈夫。」
ではなく、
「今日は蒸し暑くないか。」
「汗が蒸発しにくい環境ではないか。」
「風はあるか。」
「カラダに熱がたまっている感じはないか。」
まで考えてみてください。
さらに、
熱中症の危険をより総合的に判断するときには、
WBGTも確認する。
この習慣が、
「まだ大丈夫」という思い込みから、
自分や大切な人を守ることにつながります。
■|まとめ──暑さは「氣温」だけでは決まらない
熱中症を防ぐために、
今日の氣温を確認することは大切です。
しかし、
氣温だけでは、カラダが受けている暑さを十分に判断できません。
湿度が高くなると、
汗が蒸発しにくくなり、
カラダから熱を逃がしにくくなります。
そのため、
氣温がそれほど高くなくても、
熱中症の危険が高まることがあります。
だから、
これからは、
「今日は何℃?」だけでなく、
「今日はどれくらい蒸し暑い?」
まで見るようにしてください。
熱中症から命を守るために必要なのは、
暑くなってから我慢することではありません。
危険になる条件を知り、危険になる前に行動を変えることです。
|次回予告
次回は、
#24|家の中でも熱中症になる──室内に潜む危険
についてお伝えします。
「外に出ていないから大丈夫。」
「家の中だから熱中症にはならない。」
そう思っていても、
室内では知らないうちに熱がこもり、
熱中症が起こることがあります。
なぜ家の中でも熱中症になるのか。
夜間はなぜ注意が必要なのか。
そして、
エアコンを使わないことが、なぜ危険につながるのか。
次回は、
「家=安全」という思い込みを見直していきます。
|参考・出典
環境省「熱中症予防情報サイト|熱中症の予防方法と対処方法」
熱中症を引き起こす環境要因として、氣温の高さ・湿度の高さ・風の弱さなどがあること、また汗や皮膚温度の上昇によって体温を外へ逃がす仕組みなど、本記事の「湿度と体温調節」「汗による放熱」の説明に参照しました。
環境省「熱中症予防情報サイト|暑さ指数(WBGT)とは?」
WBGTが、湿度・日射や輻射などの周辺熱環境・氣温を取り入れた指標であることについて、本記事の「氣温だけでは熱中症リスクを判断できない」という説明に参照しました。
環境省「熱中症予防情報サイト|よくある質問」
氣温のみの場合より、湿度や日射・輻射を考慮したWBGTの方が熱中症救急搬送者数との関連が強いことについて、本記事の暑さを総合的に判断する必要性の説明に参照しました。
※本記事の内容は、執筆時点で公的機関が公表している情報をもとに作成しています。熱中症が疑われる症状がある場合や、体調に不安がある場合は、自己判断だけで対応せず、必要に応じて医療機関への相談・受診や救急要請を行ってください。
|関連記事
湿度と熱中症の関係をさらに理解するために、こちらの記事もあわせてご覧ください。
▶ #2|熱中症を防ぐ体温調節の仕組み──人はなぜ体温を保てるのか
汗や皮膚血流によって、カラダがどのように熱を外へ逃がしているのかを解説しています。
▶ #12|熱中症では汗はどう変わる?──汗が出ない・汗が止まらないとき
大量の汗や、暑いのに汗が出にくい状態など、熱中症で見られる汗の変化と、汗だけでは重症度を判断できない理由を解説しています。
▶ #18|熱中症はどんな人がなりやすい?──リスクを知ることが予防の第一歩
熱中症は、一つの原因だけで起こるとは限りません。人・体調・環境など、さまざまな危険な条件を重ねて考える第3章の基本を解説しています。
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|暑さだけではなく、自分のカラダにも目を向ける
同じ氣温、同じ湿度の中にいても、
暑さの感じ方やカラダの状態は毎日同じではありません。
だからこそ大切なのは、
環境の数字を見ることと同時に、
自分の呼吸や姿勢、疲労、カラダの変化に日頃から氣づけること。
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呼吸と姿勢を入り口に、自分のカラダに目を向け、毎日のセルフケアを続ける習慣づくりを行っています。
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|シリーズ一覧
第1章|熱中症の正体を知る(全9記事・公開済)
「熱中症とは何か」から始まり、体温調節の仕組み、発症メカニズム、重症化する理由まで、熱中症の本質を体系的に学べる章です。
第1章|熱中症の正体を知る
🟠 #0|なぜ今、熱中症を学ばなければならないのか
熱中症を今学ぶ必要性と、本シリーズを通して身につけてほしい知識と行動について解説しています。
🟠 #1|熱中症とは何か──まず知っておきたい基本
熱中症の定義と、体温調節が破綻することで起こる病態の基本を解説しています。
🟠 #2|熱中症を防ぐ体温調節の仕組み──人はなぜ体温を保てるのか
人間が体温を一定の範囲に保つために働く、汗や皮膚血流などの体温調節機能を解説しています。
🟠 #3|熱中症はどう起こる?──カラダの中で起きていること
熱中症が発症するまでに、熱・血液・水分・脳や臓器にどのような変化が起きるのかを解説しています。
🟠 #4|熱中症は誰でもなる──「自分は大丈夫」が一番危ない
年齢や体力に関係なく、誰にでも熱中症が起こる可能性がある理由を解説しています。
🟠 #5|熱中症は予防できる──起きる前の判断が命を守る
熱中症を防ぐために必要な基本的な考え方と、早い段階で行動を変える重要性を解説しています。
🟠 #6|熱中症になると何が起こる?──全身に及ぶ影響
熱中症が進行したとき、脳・心臓・血管・腎臓・筋肉・肝臓・血液凝固など、全身へどのような影響が及ぶのかを解説しています。
🟠 #7|熱中症が命を奪う理由──死亡と後遺症を防ぐために
熱中症が重症化すると、なぜ死亡や後遺症につながることがあるのか。命を守るために知っておきたい危険性と、早期対応の重要性を解説しています。
🟠 #8|第1章まとめ──熱中症を正しく知ることが命を守る第一歩
熱中症の仕組みや危険性など、第1章で学んだ大切なポイントを整理した記事です。
第2章|熱中症の症状を知る
熱中症では、どのような症状が現れるのか。
初期症状から重症化のサイン、受診の判断まで、熱中症を見逃さず、命を守るために知っておきたい症状と対応を学ぶ章です。
🔵 #9|熱中症ではどんな症状が出る?──見逃してはいけないサイン
熱中症では、軽い異変から命に関わる症状まで、さまざまなサインが現れます。症状全体を俯瞰し、第2章で何を学ぶのかをわかりやすく解説しています。
🔵 #10|これって熱中症?──最初に現れやすい初期症状
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、こむら返り、頭痛、吐き氣、倦怠感など、熱中症の初期に現れやすい症状と、「まだ大丈夫」と見過ごさず早めに氣づくことの重要性を解説しています。
🔵 #11|熱中症の危険なサインを見逃さない──重症化を疑う症状
意識がおかしい、呼びかけへの反応が鈍い、まっすぐ歩けない、けいれん、高体温など、熱中症の重症化を疑う危険なサインと、迷わず救急要請につなげることの重要性を解説しています。
🔵 #12|熱中症では汗はどう変わる?──汗が出ない・汗が止まらないとき
大量の汗や、暑いのに汗が出にくい状態など、熱中症で見られる汗の変化と、汗だけでは重症度を判断できない理由を解説しています。
🔵 #13|熱中症?それとも別の病氣?──見分けるときの考え方
熱中症と似た症状を示す病氣もあります。熱中症を疑うことは大切ですが、思い込みによって重大な病氣を見逃さないための考え方を解説します。
🔵 #14|この症状、大丈夫?──熱中症の重症度を見極める考え方
熱中症のⅠ度からⅣ度までの重症度分類と、症状や全身状態の変化を見ながら、必要な対応を考えるための重症度の考え方を解説しています。
🔵 #15|病院へ行く?救急車を呼ぶ?──熱中症での受診判断基準
熱中症が疑われたとき、病院を受診するタイミングや救急車を呼ぶ判断基準について解説しています。意識や反応、水分摂取の可否、症状の改善など、命を守るために知っておきたい受診判断のポイントを学べます。
🔵 #16|少し良くなっても油断しない──熱中症はその後の見守りも大切
熱中症では、症状が軽くなっても安心とは限りません。改善後も見守るべきポイントや、無理に活動を再開しないことの大切さについて解説しています。
🔵 #17|第2章まとめ──熱中症の症状を知ることが命を守る
熱中症の初期症状や危険なサイン、重症度、受診判断、改善後の見守りなど、第2章で学んだ大切なポイントを整理し、異変に早く氣づき、必要な行動につなげるための考え方をまとめています。
第3章|熱中症になりやすい人・環境を知る
熱中症は誰にでも起こる可能性がありますが、その危険性は年齢、体調、持病、生活環境、活動内容などによって変わります。
第3章では、「危険な人」を決めつけるのではなく、どんな危険な条件が重なっているのかを見て、熱中症になる前に危険を予測する力を身につけていきます。
🟢 #18|熱中症はどんな人がなりやすい?──リスクを知ることが予防の第一歩
熱中症のなりやすさは、年齢や体調、生活環境、活動内容などによって変わります。「危険な人」ではなく「危険な条件が重なっていないか」という、第3章全体の土台となる考え方を解説しています。
🟢 #19|高齢者はなぜ熱中症になりやすい?──加齢による変化を知る
加齢によって、暑さやのどの渇きを感じにくくなり、体温調節機能なども変化します。高齢者が熱中症になりやすい理由と、本人の感覚だけに頼らず、周囲が見守ることの大切さを解説しています。
🟢 #20|こんなに氣をつけているのに、なぜ子どもが熱中症になるのか?
帽子や水分補給などに氣をつけていても、子どもが熱中症になることがあります。子ども特有のカラダや行動の特徴と、周囲の大人がさらに一歩先回りして守るために知っておきたいことを解説しています。
🟢 #21|若くて元氣でも、なぜ熱中症になる?──仕事・スポーツに潜む危険
若くて健康で体力があっても、仕事やスポーツではカラダ自身が熱をつくり、無理を続けることで熱中症になることがあります。「まだ動ける=大丈夫」ではない理由と、限界になる前に止まる判断の大切さを解説しています。
🟢 #22|持病や薬だけじゃない──熱中症リスクを高めるカラダの状態
持病や服用している薬だけでなく、身体機能や認知機能、自分で水分を取れるか、暑さを避けられるかといった状態も熱中症リスクに関係します。本人任せにせず、その人が自分で暑さから身を守れる状態なのかを見ることの大切さを解説しています。
🟢 #23|氣温がそれほど高くなくても危険?──湿度が熱中症リスクを高める理由(今回の記事)
熱中症の危険は、氣温だけでは判断できません。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、カラダから熱を逃がしにくくなります。蒸し暑い日や梅雨の時期にも注意が必要な理由と、「氣温+湿度」で危険を見る大切さを解説しています。
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