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読書メモ:八咫烏⑨烏の緑羽

一気読みした八咫烏シリーズの読み直し、第9巻「烏の緑羽」。時を一気に遡って、側近・路近との関係を悩む長束が、清賢を訪ね、翠寛を参謀に迎え入れる話。路近とその周辺の過去のお話が挟まれ、ちょっぴり外伝テイスト感あり。

路近っていいキャラだよなぁ…。常人には理解しがたい路近、実は超絶シンプルな行動原理で動いている。一方で一見常人な清賢のぶっ飛びっぷりがいい!翠寛の過去を知って、印象が全く変わった。「空棺の烏」を再読したくなる。

清賢が利き腕を切られるとき、路近が問う。

「何か、私を助けることで利益があるのか?」
どこかから恩賞が出るのか、と困惑のままに問う路近を、清賢は笑い飛ばした。
「そんなものはありません。言ってみれば、これは意地です」
「意地で腕が落とせるものか。表面に現われたものが意地だとしても、それを下支えする何かがあるはずだ。お前に資する何かが」
「では道楽だと思いなさい」
「道楽……」
それこそあり得ない、と、路近はこれまでになく混乱しているようだった。
清賢は路近から翠へと視線を移した。
「翠は君を殺さない。私はあなたの腕を守るために、自分から腕を落とします。何故だかわかりますか」
「わからない」
「なら、考え続けなさい。その複雑さこそが君を救うだろう」
無言になった路近を見て、清賢は壮絶に笑う。
「君が思うよりも世界は広く、人の心は深遠だ。そう簡単に解るものじゃない。だから面白いんだろう? どうなるか分からないから」
それを聞いた路近の目に、これまでにない光が灯ったように見えた。

『烏の緑羽』阿部智里 文春文庫より

そして時は流れ、長束と路近の会話に「道楽」という言葉が出てくる。
路近は考え続けたのだろうな。

「分からん……。そなたは忠誠を馬鹿にしたのと同じ口で、自分を忠臣だと言う。そなたにとって、忠誠とは何なのだ?」
それを聞いた瞬間、路近はパッと、子どものように笑ったのだった。
「道楽です」

『烏の緑羽』阿部智里 文春文庫より

キーパーソンになりそうな翠寛と、路近の関係性を示すとするとここだろうか。

「うるせえんだよ、糞野郎!」
呆然とする長束の前で、ぴくりとも動かぬ路近に吐き捨てたのは、燈台を逆さに構えた翠寛であった。
金属で出来た台座部分で路近のこめかみを力任せに叩いたのだと悟り、その瞬間だけ、状況も忘れて声が出た。
「死んだのでは?」
「これくらいでくたばるようなら、俺は苦労しなかった」
鼻で笑い、翠寛は燈台を無造作に投げ捨てた。

『烏の緑羽』阿部智里 文春文庫より

それにしても、バブちゃん扱いされた長束、それでも大人しく従う姿がよい。一皮むけて、未来への希望が感じられる。

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八咫烏シリーズ読書メモ


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